HELLP(ヘルプ)症候群とは?症状・原因は?診断基準や胎児への影響など解説

【医師監修】妊娠後期にみられるHELLP(ヘルプ)症候群とはどんな病気でしょうか。あまり知られていないだけに心配です。症状、原因、診断基準、母体や胎児への影響などHELLP症候群について、先輩ママの体験談やドクターの助言を交えて解説します。参考にしてください。

Contents
目次
  1. HELLP症候群とは?
  2. HELLP症候群の症状・原因は?
  3. HELLP症候群の診断基準
  4. HELLP症候群の治療法
  5. HELLP症候群を発症した場合の産後の母体、胎児への影響は?
  6. HELLP症候群に似た病気は?
  7. HELLP症候群を発症した人たちの体験談!
  8. 妊娠中のHELLP症候群の兆候に気付こう!

HELLP症候群とは?

もう少しで赤ちゃんに会える、そんな妊娠後期になりやすい病気のひとつがHELLP症候群です。耳慣れない言葉ですが、油断するとママだけでなく赤ちゃんにまで影響がでるため、注意したい病気です。

HELLP症候群という名前は、3つの主な特徴の頭文字からなっています。まずは「溶血(Hemolysis)」で赤血球が破壊されることです。次に「肝酵素上昇(Elevated Liver enzyme)」で、これは肝機能が異常をきたすこと、そして「血小板減少(Low Platelet)」があげられます。(※1)

HELLP症候群は妊娠後期に発症しやすいとされていますが、産後に発症することもあり、全体の約3割が出産直後にHELLP症候群になっています。母体や胎児に合併症が起こる危険もあり、時には母体の生命にかかわる病気です。早期発見と適切な対応が重要です。

HELLP症候群の症状・原因は?

HELLP症候群は、1982年に名付けられた病気です。妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)に伴ってかかる病気のなかでもとくに重症なものといわれています。なぜHELLP症候群になってしまうのかや、その症状についてみていきましょう。

HELLP症候群の原因

実はHELLP症候群の詳しい原因は特定されていないのが現状です。冠動脈のけいれん性収縮や血管内の細胞の障害などとの関連が考えられています。

妊娠高血圧症候群と診断されている妊婦の約4~12%、さらに重度になると10~20%の確率で併発します。さらに重度の妊娠高血圧症候群で子癇(しかん)の発作を起こしたことがある場合は、約50%が併発するといわれ、妊娠高血圧症候群との関連がうかがえます。(※1)

HELLP症候群の症状

HELLP症候群の症状としては、お腹の上部の痛みや胃痛、吐き気や嘔吐です。疲労感やだるさ、下痢などの症状がでる場合もあります。風邪の症状や妊娠後期の特有の不快感と似ているため、それらの症状であると思い込んでしまうこともあるでしょう。


また、子癇の前触れとして、頭痛や目のかすみ、目がチカチカするなどの症状や肝機能障害による黄疸、血小板減少による出血などが起こる可能性もあります。

カズヤ先生

産婦人科医

HELLP症候群の3大症状としては、頭痛、眼華閃発(がんかせんはつ=目のチカチカ)、心窩部(しんかぶ=みぞおち)痛があります。 妊娠高血圧を合併した妊婦さんの場合、産前も産後もこれらの症状には注意が必要です。 ただし出現頻度は一万人に数件程度で、かなり稀(まれ)な合併症と言えます。

(妊娠後期の胃痛については以下の記事も参考にして下さい)

妊娠後期の胃痛の原因は?病気の可能性も?激痛を和らげる適切な対処法も紹介!

HELLP症候群の診断基準

HELLP症候群と診断されるのはどのような場合なのでしょうか?症状が重篤になれば危険を伴う病気だけに、しっかりと早めの診断してもらうことが重要です。

HELLP症候群の診断基準・血液検査

HELLP症候群の国際的に確立された診断基準はありませんが、血液検査によって診断をするのが一般的です。溶血(破砕赤血球の出現・血清間接ビリルビン値1.2㎎/dL以上・ハプトグロビン25㎎/dL以下)、肝酵素の上昇(血清LDH600U/L以上・血清AST70U/L以上)、血小板の減少(10万/μL以下)などの数値で診断します。(※1)


またこれら3つの数値が異常を示していなくても、ひとつでも正常でない数値があった場合は「partial HELLP症候群」として重症化する可能性を含め、経過を観察する必要があります。

HELLP症候群の診断基準となる主な所見

HELLP症候群の診断基準となる主な所見はほとんどの症例で高血圧やタンパク尿が先行して起こり、半数以上が全身のむくみを訴えます。早期に診断するためには、急激な体重増加やタンパク尿などの兆候を見逃さないことです(※1)。

発症時期はほとんどが妊娠後期です。出産前が7割、残りの3割は産後48時間以内に発症します。