卵膜とは?構造・役割は?胎児付着物と妊娠の関係性、卵膜付着・遺残についても解説
【医師監修】妊娠するとできる卵膜って、どんな働きをしているのでしょうか。文字通り、受精卵を包む膜でしょうか。卵膜の構造や役割、また胎児付着物と妊娠の関係性、卵膜付着、卵膜遺残などトラブルについてドクターの指摘を交えて説明します。妊婦さんは参考にしてください。
妊婦さんなら、内診グリグリという言葉を聞いたことがあるという人も多いでしょう。内診グリグリというのは、卵膜剥離の俗称です。卵膜剥離は、予定日が近づいても陣痛が来ない・子宮口が開かない妊婦さんが、内診の時に受ける処置です。卵膜剥離をすることで、本当に陣痛を促すことができるのでしょうか?
卵膜剥離の処置をすると、妊娠42週目以降になってもお産を迎えられない女性が減り、薬剤を使って分娩を促すことが少なくなる、という研究結果があります。日本助産学会編集の「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」に記載のあることなので、かなり確かな情報だといえるでしょう。(※5)
卵膜剥離が過期産に効果的だとはいえ、医師の資格をもっていない方が不用意に行ってはいけません。卵膜剥離は子宮の収縮や出血を伴う施術ですので、資格や経験のある人に経過確認と管理をしてもらうものです。
リエ先生
産婦人科医
正期産になると、陣痛がくるといわれる内診グリグリを希望される方がいます。内診グリグリは医療用語で卵膜剥離といいますが、子宮の壁と卵膜を鈍的に剥離することをいいます。それが刺激になり、お腹が張りやすくなるため、陣痛がおきやすいといわれています。
(内診グリグリについては以下の記事も参考にしてください)
卵膜に関わる妊娠中のトラブル3選
妊娠中のトラブルの中には、胎児付属物の一部である卵膜に関わるトラブルもあるのでしょうか?卵膜に関する代表的なトラブルを紹介します。
卵膜に関係するトラブルを経験する妊婦さんはそう多くはありません。心配しすぎる必要はないでしょう。しかし、胎児付属物に関するトラブルは目に見えないのでわかりにくものです。異変を感じた時に早めに病院に行ったり、妊婦健診をしっかり受けるなど、十分に対策をしくことが大切です。
(妊娠後期のトラブルについては以下の記事も参考にしてください)
卵膜付着
通常、へその緒は臍静脈と臍動脈を合わせた3本の血管を包むワルトン膠質(こうしつ)で構成されていますが、卵膜付着の場合、3本の血管を包むワルトン膠質がなく、血管がむき出しになってしまいます。妊婦さんの中の1~2パーセントの確率で起きる症状です。ただし、双子などの多胎妊娠をしている場合は卵膜付着を起こす可能性が高くなります。
卵膜付着でも胎児が問題なく成長するケースがほとんどで、卵膜付着になっていると自覚することが難しいでしょう。しかし、卵膜付着になると3本の血管が圧迫されて、赤ちゃんが発育不全や心拍異常になる場合もあります。また、血管が内子宮口の近くにある場合は破水と同時に血管が切れる可能性があります。その場合は、帝王切開で出産をすることになるでしょう。
卵膜遺残
出産のあと、胎盤や卵膜が何らかの原因で体の中に残ってしまう場合があり、胎盤遺残や卵膜遺残と呼びます。
卵膜遺残が起こると、子宮が小さく収縮することを妨げてしまいますね。このため、出産が終わってから4日以上赤色の悪露が続くなどの以上につながります。内診で不正出血や子宮が十分に縮んでいないと診断され、エコー検査で卵膜遺残を確認された場合は子宮収縮薬を使った処置になります。
卵膜遺残が起こる原因はいくつかありますが、妊娠中に細菌に感染する子宮内感染や、胎盤が子宮に癒着して離れにくくなってしまう癒着胎盤などの場合は卵膜遺残になる可能性があるでしょう。確率は高くないとは言え、卵膜遺残になってしまう可能性は誰にでもあります。悪露の状態など、出産後の経過にも注意してみてくださいね。
絨毛膜羊膜炎
絨毛膜羊膜炎とは、膣から入った細菌が絨毛膜や羊膜まで入り込んで細菌感染することです。絨毛膜羊膜炎になると、胎児の脈が速くなったり、発熱したりするなどの症状が表れます。おりものから悪臭が出る妊婦さんもいます。しかし、自覚がない妊婦さんも多いようです。細菌感染が進み、切迫早産になって初めて細菌感染が発覚するケースもあります。
絨毛膜羊膜炎になった場合、早産や流産につながる可能性があります。無事に出産できたとしても、出産をする時に産道から感染して新生児結膜炎や肺炎を起こす場合もあります。出産の前の検査で、細菌に感染していないかを確認しておくことがとても大切です。
妊婦さんが絨毛膜羊膜炎になる原因の1つにクラミジアの感染があります。クラミジアはセックスなどの粘膜の接触で簡単に感染しますし、自覚症状が無い場合も多い感染症です。セックスの時にコンドームを付けたり、出産の前に検査を受けることが大切ですね。日本産科婦人科学会でも、妊娠30週目までにクラミジアの検査を受けることを推奨していますよ。
卵膜は妊娠中の大切な組織
卵膜の構造や役割のほか、卵膜と胎盤の関係などを紹介してきました。卵膜は胎児を守るためにとても大切な組織です。
卵膜に関して妊婦さんが直接手を加えることはできませんが、細菌への感染を予防したり、必要な検査を必ず受けるなど、卵膜の機能を守るためにできることはたくさんあります。お腹の中にいる赤ちゃんを守るために、しっかり対策をしたいですね。
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