卵膜とは?構造・役割は?胎児付着物と妊娠の関係性、卵膜付着・遺残についても解説

【医師監修】妊娠するとできる卵膜って、どんな働きをしているのでしょうか。文字通り、受精卵を包む膜でしょうか。卵膜の構造や役割、また胎児付着物と妊娠の関係性、卵膜付着、卵膜遺残などトラブルについてドクターの指摘を交えて説明します。妊婦さんは参考にしてください。

Contents
目次
  1. 卵膜とは?胎児付着物の一種?
  2. 卵膜の構造・役割は?
  3. 卵膜と胎盤の関係は?
  4. 卵膜の働きは?卵膜剥離で陣痛を促すことができる?
  5. 卵膜に関わる妊娠中のトラブル3選
  6. 卵膜は妊娠中の大切な組織

卵膜とは?胎児付着物の一種?

胎児が妊婦さんのお腹の中で成長をするためには、胎児を育てるための器官が必要です。胎盤やへその緒、羊水や卵膜などで、胎児付属物と呼ばれています(※1)。

胎児付属物の中の1つである卵膜というのは、胎児と羊水が入った膜のことです(※2)。卵膜は外側から脱落膜、絨毛膜(じゅうもうまく)、羊膜という3層構造をしている非常に薄い膜です。胎児を細菌から守る役割もあることから、卵膜が破れて破水した後に胎児が長時間お腹の中にいると、細菌に感染しやすくなってしまいます。

リエ先生

産婦人科医

卵膜は大雑把にいうと、胎児と羊水を包んでいる膜のことです。卵膜に穴が空くと破水するわけですが、通常卵膜が破れることはなかなかありません。早産の時期に破水が起こる場合は、感染により卵膜も弱くなっていることが多いです。

卵膜の構造・役割は?

胎児付属物の一部である卵膜には、羊水と胎児を守るという役割があります。

卵膜は脱落膜、絨毛(じゅうもう)膜、羊膜という3層構造になっていますが、それぞれの層が違う役割をもっています。脱落膜、絨毛膜、羊膜のそれぞれの役割を紹介していきます。

(羊水については以下の記事も参考にしてください)

羊水とは?色や匂いは?どんな役割なの?少ないと胎児が発達不良に?

羊膜

羊膜は、卵膜の一番内側にある膜のことです。羊膜の中は羊水で満たされていて、胎児を外部の衝撃や細菌、ウイルスなどから守ります。羊膜の主成分はラミニンやコラーゲンなどのたんぱく質です。1ミリ未満のとても薄い半透明の膜ですが、赤ちゃんが妊婦さんのお腹の中でのびのび動けるように、よく伸びる性質をもっています。(※3)

絨毛膜

絨毛膜は、羊膜を外側から包んでいる膜です。絨毛膜は、妊娠初期の頃には絨毛でおおわれています。しかし、妊娠中期、後期と時間が進むにつれ、1部分を残して絨毛が退化します。絨毛が退化した部分の絨毛膜のことを「絨毛膜無毛部」と呼びます。

一方、絨毛が残った部分の絨毛膜は「絨毛膜毛部」と呼ばれます。絨毛膜がある部分の絨毛膜は、もう1層外側にある脱落膜と接して、胎盤の一部になります。

脱落膜

脱落膜は、3層の卵膜のうち一番外側にある膜です。脱落膜はもともと子宮内膜だったものが着床したことで大きくなり、膜に変化したものです(※4)。

脱落膜は2つに分かれます。受精卵が着床した底の部分の基底脱落膜と子宮内膜に潜り込んで再び表面を覆った時にできる被包脱落膜と子宮腔の内側を覆っている壁側脱落膜です。

胎児が大きくなっていくと、被包脱落膜が壁側脱落膜に近づいていきます。被包脱落膜と壁側脱落膜が接合すると、1つの組織として卵膜を作る素になっていくのです。

卵膜と胎盤の関係は?

卵膜の一部である絨毛膜と脱落膜の一部は、胎児付属物である胎盤を作ります。胎盤というのは円盤のような形をした組織です。赤ちゃんのへその緒とつながっていて、赤ちゃんに酸素や栄養を届けます。卵膜と胎盤はなにか関係があるのでしょうか?

胎盤を作っているのは、絨毛が残った絨毛膜である絨毛膜有毛部と、脱落膜の基底部分の基底脱落膜です。つまり、胎盤は、着床をした場所を基準に形成されるということです。受精卵が着床した部分を基準にしてできた胎盤は、赤ちゃんの成長と共に大きくなっていきます。

胎盤が厚い円盤のような構造なのは、絨毛膜有毛部と基底脱落膜の間に、妊婦さんの血液が入っているからです。妊婦さんの血液が入っている部分を絨毛間腔といいます。絨毛間腔には絨毛膜から伸びる絨毛幹という突起が伸びています。絨毛幹の中に赤ちゃんから伸びる毛細血管が走っていて、絨毛幹を通して赤ちゃんが栄養や酸素を吸収する仕組みになっています。

(胎盤については以下の記事も参考にしてください)

胎盤とは?どんな役割?成長の目安は?完成したら安定期?

卵膜の働きは?卵膜剥離で陣痛を促すことができる?