HELLP(ヘルプ)症候群とは?症状・原因は?診断基準や胎児への影響など解説

【医師監修】妊娠後期や産後に注意が必要な病気のひとつである、HELLP(ヘルプ)症候群の原因、診断基準、治療法などを解説します。HELLP(ヘルプ)症候群を発症した場合の産後の胎児・母体への影響や、実際に発症した人たちの体験談も合わせて紹介します。

専門家監修 | 産婦人科医 カズヤ先生
現在11年目の産婦人科医です。国立大学医学部卒業。現在は関西の総合病院の産婦人科にて勤務しています。本職の都合上、顔出しできませんが、少しでも多くの方に正しい知識を啓蒙していきたいと考えています...
現在11年目の産婦人科医です。国立大学医学部卒業。現在は関西の総合病院の産婦人科にて勤務しています。本職の都合上、顔出しできませんが、少しでも多くの方に正しい知識を啓蒙していきたいと考えています。よろしくお願いいたします。

目次

  1. HELLP(ヘルプ)症候群とは?
  2. HELLP(ヘルプ)症候群の症状・原因は?
  3. HELLP(ヘルプ)症候群の診断基準
  4. HELLP(ヘルプ)症候群の治療法
  5. HELLP(ヘルプ)症候群を発症した場合の産後の母体・胎児への影響は?
  6. HELLP(ヘルプ)症候群に似た病気は?
  7. HELLP(ヘルプ)症候群を発症した人たちの体験談!
  8. 妊娠中のHELLP(ヘルプ)症候群の兆候に気付こう!

HELLP(ヘルプ)症候群とは?

もう少しで赤ちゃんに会える、そんな妊娠後期になりやすい病気のひとつがHELLP症候群です。耳慣れない言葉ですが、油断するとママだけでなく赤ちゃんにまで影響がでるため、注意したい病気です。

HELLP症候群という名前は、3つの主な特徴の頭文字からなっています。まずは「溶血(Hemolysis)」で赤血球が破壊されることです。次に「肝酵素上昇(Elevated Liver enzyme)」で、これは肝機能が異常をきたすこと、そして「血小板減少(Low Platelet)」があげられます。(※1)

HELLP症候群は妊娠後期に発症しやすいとされていますが、産後に発症することもあり、全体の約3割が出産直後にHELLP症候群になっています。母体や胎児に合併症が起こる危険もあり、時には母体の生命にかかわる病気です。早期発見と適切な対応が重要です。

HELLP(ヘルプ)症候群の症状・原因は?

HELLP症候群は、1982年に名付けられた病気です。妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)に伴ってかかる病気のなかでもとくに重症なものと言われています。なぜHELLP症候群になってしまうのかや、その症状についてみていきましょう。

HELLP症候群の原因

実はHELLP症候群の詳しい原因は特定されていないのが現状です。冠動脈のけいれん性収縮や血管内の細胞の障害などとの関連が考えられています。

また、妊娠高血圧症候群と診断されている妊婦の約4~12%、さらに重度になると10~20%の確率で併発します。さらに重度の妊娠高血圧症候群で子癇の発作を起こしたことがある場合は、約50%が併発するといわれ、妊娠高血圧症候群との関連がうかがえます。(※1)

HELLP症候群の症状

初期症状としては、お腹の上部の痛みや胃痛、吐き気や嘔吐です。疲労感やだるさ、下痢などの症状がでる場合もあります。風邪の症状や妊娠後期の特有の不快感と似ているため、それらの症状であると思い込んでしまうこともあるでしょう。


また、子癇の前触れとして、頭痛や目のかすみ、目がチカチカするなどの症状や肝機能障害による黄疸、血小板減少による出血などが起こる可能性もあります。

カズヤ先生

産婦人科医

HELLP症候群の3大症状としては、頭痛、眼華閃発(目のチカチカ)、心窩部痛があります。 妊娠高血圧を合併した妊婦さんの場合、産前も産後もこれらの症状には注意が必要です。 ただし出現頻度は一万人に数件程度で、かなり稀な合併症と言えます。

(妊娠後期の胃痛については以下の記事も参考にしてみて下さい)

妊娠後期の胃痛の原因は?病気の可能性も?激痛を和らげる適切な対処法も紹介!

HELLP(ヘルプ)症候群の診断基準

HELLP症候群と診断されるのはどのような場合なのでしょうか?症状が重篤になれば危険を伴う病気だけに、しっかりと早めの診断してもらうことが大事です。

HELLP症候群の診断基準・血液検査

国際的に確立された診断基準はありませんが、血液検査によって診断をするのが一般的です。溶血(破砕赤血球の出現・血清間接ビリルビン値1.2㎎/dL以上・ハプトグロビン25㎎/dL以下)、肝酵素の上昇(血清LDH600U/L以上・血清AST70U/L以上)、血小板の減少(10万/μL以下)などの数値で診断します。(※1)


またこれら3つの数値が異常を示していなくても、ひとつでも正常でない数値があった場合は「partial HELLP症候群」として重症化する可能性を含め、経過を観察する必要があります。

HELLP症候群の診断基準となる主な所見

HELLP症候群を発症する時期は、ほとんどが妊娠後期です。出産前が7割、残りの3割は産後48時間以内に発症します。ほとんどの症例で高血圧やタンパク尿が先行して起こり、半数以上が全身のむくみを訴えます。早期に診断するためには、急激な体重増加やタンパク尿などの兆候を見逃さない必要があります。(※1)

カズヤ先生

産婦人科医

HELLP症候群の多くは、妊娠高血圧に伴う弛緩発作に連動して発症します。 合併症としては、子宮内胎児発育遅延、常位胎盤早期剥離、血液凝固異常、肺水腫、網膜剥離、などで、どれも非常に危険な合併症です。

(妊娠中毒症については以下の記事も参考にしてみて下さい)

妊娠中毒症とは?原因・症状は?食事などでむくみを予防する方法や胎児への影響など解説

HELLP(ヘルプ)症候群の治療法

HELLP症候群と診断された場合、基本的には妊娠を中断(ターミネーション)させる方法がとられます。妊娠34週以降で胎児の成長が順調な場合は、帝王切開で分娩します。母体と胎児の状態を慎重に観察しながら、分娩のタイミングを計る必要があります。

HELLP症候群の直接的な治療法ではありませんが、母体の状態を安定させるためにステロイドを投与することがあります。未熟な胎児の肺機能の成熟をたすける役割もあり、HELLP症候群には有効な手段です。

HELLP(ヘルプ)症候群を発症した場合の産後の母体・胎児への影響は?

HELLP症候群で出産した場合、産後すぐに数値が基準値に落ち着くわけではありません。母体も赤ちゃんも慎重に経過を見守る必要があります。母子ともに合併症を引き起こす可能性もあるからです。

HELLP症候群・産後の母体の状態は?

分娩後に母体が起こす合併症の危険を考慮しながら、血圧の管理や水分バランス、子癇への注意をしなければなりません。例えば急性腎不全や肺水腫、DICなどのリスクが考えられます。しっかりとした管理のもとで適切な治療法を行いながら経過を見守る必要があります。(※1)

HELLP症候群・産後の胎児への影響は?

HELLP症候群が原因で死産になったり産後1週間以内の新生児の死亡したりする確率は7~20%にもなります。HELLP症候群の胎児への直接的な影響は不明ですが、早産になる可能性が高いほか、発育不全や呼吸器の障害など様々な合併症になる恐れがあります。(※1)

産後はNICUで経過を観察することになります。分娩の時期によってはとても小さく生まれることもありますが、しっかりとした管理のもとで成長を促すようになります。

(早産については以下の記事も参考にしてみて下さい)

【医師監修】妊娠35週の妊婦・胎児の状態は?症状や注意点!早産の体験談も!

HELLP(ヘルプ)症候群に似た病気は?

HELLP症候群と同じような症状があらわれたからと言って、必ずしもHELLP症候群だとは限りません。同じような症状がでる病気はたくさんあります。まずは、医師に相談してきちんとした検査を受けることが大事です。

HELLP症候群に似た病気【炎症性疾患・消化器疾患】

突然の上腹部の痛みは、HELLP症候群の症状の特徴ですが、もしかしたら虫垂炎や急性胆のう炎などの場合もあります。またウィルスによる感染症などでも同じような症状が見られます。

HELLP症候群に似た病気【血小板減少が見られる病気】

特発性血小板減少性紫斑病や再生不良性貧血、全身性エリテマトーデスなどの病気では、血小板の数値がHELLP症候群と同じように減少しているため、注意が必要です。各病気に沿った治療法が必要なので、しっかりと検査して適切な治療をしましょう。

HELLP症候群に似た病気【妊娠に関連する病気】

急性妊娠脂肪肝は肝酵素の上昇が見られます、また妊娠性血小板減少症という病気もあります。溶血は重度の貧血の兆候でもあります。妊娠中の体の異変は適切な診断と治療法が大事です。まずはきちんと病院で相談しましょう。


(妊娠後期の吐き気については以下の記事も参考にしてみて下さい)

【医師監修】臨月の吐き気が気持ち悪い!妊娠後期の症状?原因と対策は?

HELLP(ヘルプ)症候群を発症した人たちの体験談!

HELLP症候群を経験したママ達の体験談を紹介します。怖い病気ですが、きちんとした知識と早めに兆候をつかむことができれば乗り越えていくことができるでしょう。体験談を参考に、思い当たることがあれば早めの受診をおすすめします。

子育てママ

30代

かかりつけの産婦人科でも最初はヘルプ症候群と気付いてもらえなかった。激しい頭痛と吐き気に耐えながら、血液検査でやっとヘルプ症候群と診断された。その後は有無を言わさず帝王切開で出産となりました。あのまま気付かなかったらと思うと、今でもぞっとします。

HELLP症候群と診断される妊婦さんは全体の0.2~0.6%です。決して多いとは言えないため、医師でも判断ができない場合もあるのかもしれません。我慢できない症状や不安な症状があったら、きちんと伝えてみてくださいね。

新米ママ

20代後半

はげしい胃の痛みを健診時に相談してみました。血液検査でも異常がなく、胃薬をもらって帰宅しました。でも、その夜、我慢できないほどの胃痛に襲われ、一睡もできないまま朝方再び病院へ…血液検査でヘルプ症候群と診断されました。1日で急変するなんて恐ろしい病気です。

1回目の血液検査で兆候がなくても、2回目で異常がでる場合もあります。HELLP症候群は急変する危険もあるので疑わしい場合はしっかりと経過観察をして、何度でもチェックしてもらいましょう。

主婦

30代

妊娠36週で妊娠高血圧症候群と言われました。自宅で経過観察しながら過ごしていたのですが、37週に入った頃の真夜中に突然胃に激痛がはしり、嘔吐しました。

かかりつけの産院から救急車で大きな病院へ搬送され、急きょ帝王切開で出産。その時にヘルプ症候群だったと聞きました。その後もICUに入り、赤ちゃんと会えたのは産後7日経ってからでした。

妊娠高血圧症候群とHELLP症候群の関連性は否定できません。妊娠後期は思わぬ体調の変化がある可能性があります。出産までの間、さまざまな状況に対応できるように準備を整えておくといいでしょう。

カズヤ先生

産婦人科医

妊娠高血圧症候群は、妊娠の終了によって、高血圧、タンパク尿、浮腫の3徴は速やかに改善し、42日以内に消失します。 原則、HELLP症候群もターミネーション(妊娠の終了)により速やかに改善をしていく傾向はあるのですが急性腎不全や肺水腫、DICなどが併発していた場合は、重症管理のため治療期間は長引く可能性があります。

妊娠中のHELLP(ヘルプ)症候群の兆候に気付こう!

HELLP症候群は、放っておくと恐ろしい病気です。HELLP症候群の症状である胃の痛みや吐き気、だるさなどは妊娠後期には珍しくないので、兆候を感じるのが難しいところもあります。

しかし、いつもと違う症状を感じたり、不安に思った場合は、きちんと医師に相談しましょう。早めに兆候に気付くことで、少しでもリスクを回避して、ママにも赤ちゃんも元気に過ごせるようにしていきましょう。

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