羊水塞栓症とは?原因や症状は?母体の死亡率60%?胎児に影響も?

【医師監修】羊水塞栓症という病気を知っていますか?この病気は発症頻度は少ないですが、妊婦の死亡率が高い恐ろしい病気です。さらに、この病気は誰もが発症する可能性を持っています。今回は、羊水塞栓症の原因や症状、母体と胎児への影響をご説明します。

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専門家監修
カズヤ先生
現在11年目の産婦人科医です。国立大学医学部卒業。現在は関西の総合病院の産婦人科にて勤務しています。本職の都合上、顔出しできませんが、少しでも多くの方に正しい知識を啓蒙していきたいと考えています・・・
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Contents
目次
  1. 羊水塞栓症とは?
  2. 羊水塞栓症の原因・リスク因子
  3. 羊水塞栓症の症状
  4. 羊水塞栓症による母体の死亡率60%!
  5. 羊水塞栓症の診断・予防
  6. 羊水塞栓症についての知識を共有する!

羊水塞栓症による母体の死亡率60%!【胎児への影響】

羊水塞栓症による赤ちゃんへの影響も気になりますよね。分娩中に羊水塞栓症の恐れがあると診断された場合、母体の治療・処置が優先されます。したがって、赤ちゃんの命が危険な状態に晒される場合もあるようです。

分娩後に発症する場合もあります。しかし、リスク因子の中には胎児機能不全もあげられているため、安心はできません。慎重な経過観察と正しい治療が必要です。

出典:https://www.pinterest.jp/pin/474215035768294162/

赤ちゃんの後遺症は、分娩中の羊水塞栓症が関係していると確証づけることは困難です。しかし、分娩中の母体の症状や影響から考えて、後遺症が羊水塞栓症とはまったく無関係であるとは考えにくいでしょう。

羊水塞栓症の診断・予防

前述では羊水塞栓症の原因や症状についてご説明しました。この項目では実際に羊水塞栓症が発症した場合、どのような診断基準で診断されるのか、現代医療においての発症予防についてご説明します。

診断

診断には「確定診断」と「臨床診断」の2種類があります。「確定診断」とは、症状の原因になった病気をはっきり定めることです。羊水塞栓症の場合は、肺動脈に羊水成分や赤ちゃんの成分(髪の毛、胎便など)が発見されることで診断されます。

主に母体が亡くなった後に、病理解剖によって明らかになります(※1)。これまでの羊水塞栓症の診断は、確定診断が主流でした。

「臨床診断」とは、症状や発症した時期から病気を推定することです。羊水塞栓症の場合は、心停止や分娩後2時間以内の大量出血などの診断基準を満たした場合に診断されます。

臨床診断は家族の希望で病理解剖がされない場合や、母体が生存した場合に用いられるようです。羊水塞栓症の早期発見・治療に関わるため、臨床診断はとても重要なものだと言えるでしょう。

予防できるのか?

残念ですが、現代の医療では予防策はありません。しかし、羊水塞栓症の原因・リスク因子でご説明した通り、羊水塞栓症になるリスク因子が明らかになってきています。そのリスク因子が当てはまるからと言って、必ずしも発症するとは言えませんが、自分が発症する可能性を把握することも大切です。

分娩中・分娩後に発症した場合には、早期発見・治療が行えるかが重要です。分娩する病院を選ぶときの検討項目に加えてみてください。産婦人科しかない病院の場合は、総合病院との連携がきちんと図れているかが重要になります。

家から近くて通いやすいことや、病院施設の充実も大切です。しかし、万が一の場合のことを考えて備えることも必要なのではないでしょうか。

カズヤ先生

産婦人科医

病理解剖で診断が確定したとしても、あまり臨床的には意味がないのですが、近年は母体の採血で、末梢血中の亜鉛コプロポルフィリンとシアリルTN抗原という物質を検出することで、羊水塞栓を診断できるようになりました。 亜鉛コプロポルフィリンは胎児特有の物質であり、シアリルTN抗原は胎便中のムチンであり、本来母体血中には存在しない物質であり、羊水塞栓は診断可能になりました。

羊水塞栓症についての知識を共有する!

これまで再三お伝えしてきましたが、羊水塞栓症は予防策がない上に、誰にでも起こりうる可能性がある病気です。羊水塞栓症についての知識は、妊婦だけではなくその家族も知っておいてください。予防策がない上に母体の死亡率が高いため、万が一という場合もあります。分娩については家族でしっかり話し合い、万が一のときの対応を考えましょう。