自然流産にいたる原因とは?症状・兆候に気づかない?流産後の妊娠についても解説
【医師監修】自然流産とはどのような症状なのでしょうか。今回は、自然流産と人工流産の違い、自然流産の種類、流産と死産の違いをはじめ、自然流産にいたる原因・兆候・症状などを紹介します。自然流産後の妊娠・生理についてや、自然流産しないための予防法も紹介します。
自然流産とは?

妊娠22週より前に妊娠が終了してしまう状態のことを流産と言います。そして「自然流産」は人為的な手を加えていないのに妊娠が継続できなくなってしまうことです。自然流産になる確率は妊娠全体のうちの約15%を占めており、誰にでも起こりうる症状となっています(※1)。
ここでは、人工流産との違いや自然流産の種類、流産と死産の違いを詳しく紹介します。ママや家族が悲しい思いをしないように、また、マタニティライフが少しでも楽しい時間となるよう、この機会に流産についての知識を深めましょう。
リエ先生
産婦人科医
妊娠初期の自然流産のほとんどは胎児側の染色体異常が原因です。人間も自然界の生物のため、生まれても生きていけない様な重篤な染色体異常の場合は自然淘汰されるわけです。流産すると自分を責める方もいますが、お母さんの普段の行いで流産することは稀です。基本的には妊娠しても普段通りの生活をしてかまいません。
(流産の確率については以下の記事も参考にしてみてください)
人工流産と自然流産の違い
人の手を加えることなく妊娠が終了してしまう自然流産に対し、人工流産は人為的に妊娠を終了させることを言います。さまざまな理由で妊娠継続が不可能だと判断した場合に、手術や子宮収縮剤などを使用して子宮内容物を取り出す方法です。
現状では子宮収縮剤による人工流産は承認されていないため、手術で行う方法が主流となっています。
自然流産の種類
自然流産は子宮内にいる胎児の状態によって「切迫流産」「進行流産」「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」の3種類に分類されます。切迫流産は流産の一歩手前です。子宮内の胎児がまだ生きている状態のため、妊娠を継続できる可能性があります。
進行流産と稽留流産は妊娠を継続するのが難しいでしょう。進行流産は子宮口が既に開いている状態です。子宮内に胎盤や胎児などが一部でも残っている場合は不全流産、すべて出てしまっていたら完全流産と診断されます。一方の稽留流産は子宮口が閉じていても、子宮内の胎児は既に亡くなっている状態です。自覚症状がないことも多く気づかない場合もあります。
どちらも流産が進行しているので、流産の進行を止めて妊娠を継続することはできないと考えられています。
リエ先生
産婦人科医
流産にもいくつかのタイプがあり、出血とともに子宮内が嫌いになる完全流産と、赤ちゃんが育っていないにもかかわらず自然排出されない不全流産があります。しばらく様子をみても排出されないようであれば、何らかの医療処置が必要になります。ただし、出血が多くなければ、必ずしも処置は急がなければいけないというわけではなく、お母さんの状態をみながら日程を決めることも多いです。
(稽留流産については以下の記事も参考にしてみてください)
流産と死産の違い
流産は妊娠22週までに胎児が亡くなってしまうことです。一方、死産とは妊娠22週以降に赤ちゃんが亡くなった状態で外に出てくることを言います。
この基準は胎児が亡くなった時期によって産科婦人科学会で定められているものです。妊娠してから12週までが「初期(早期)流産」、12週以降で22週までが「後期流産」、妊娠22週以降は「死産」となっています。
しかし、日本の法律では妊娠22週よりも前に胎児が亡くなってしまった場合でも死産扱いとされ、死産届の提出が義務付けられています。混乱しないように覚えておきましょう。
自然流産にいたる原因

自然流産の具体的な原因の特定は難しいものです。自然流産の約8割が初期妊娠でおこるとされています。妊娠初期と妊娠後期ではどのような原因の違いがあるのでしょうか。自然流産にいたる原因を妊娠初期と妊娠後期に分けて紹介していきます。
妊娠初期の自然流産にいたる原因
初期流産にいたる原因のほとんどは赤ちゃん側にあると言われています。妊娠全体で約15%を占める自然流産のうち、約13%が妊娠してから12週までにいたる妊娠初期の段階でおこっているのです(※1)。
妊娠12週より前の早期段階は胎盤も未完成で、胎児にもまだ成長する力が備わっていません。そのため、胎児の構成や発達に関係する染色体に異常がおきたり、受精卵の異常で細胞分裂できずに胎児の成長が止まってしまう可能性があります。また、遺伝子の病気も自然流産の原因になることがあるのです。
このことから、妊娠早期はママの運動や仕事などによる流産の可能性は低いと言えます。また、妊娠早期の段階の流産には流産したことにも気づかない場合も多いでしょう。
(早期流産(妊娠初期の流産)については以下の記事も参考にしてみてください)
妊娠後期の自然流産にいたる原因
妊娠12週~22週までに妊娠が終了することを後期流産といい、後期流産ではママ側に原因がある場合が多いとされています。妊娠14週を経過すると胎盤や胎児の状態が安定してくるため、流産の確率は低くなるでしょう。
妊娠後期で自然流産にいたる原因には以下のようなものがあります。子宮筋腫、分娩時に赤ちゃんの通る部分が衰弱する子宮頸管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)、卵巣内で排卵後に形成される黄体ホルモンの分泌が不足する黄体機能不全などです。また、感染症やストレス、飲酒・喫煙なども自然流産を引き起こす可能性があると言われています。(※2)
自然流産の兆候・症状

お腹の張りや出血など、妊娠中に何かあるたび頭をよぎるのは「流産」という言葉ではないでしょうか。流産の症状は正常な妊娠でもおきる可能性がありますが、自己判断は大変危険です。自然流産の兆候や症状を紹介しますので、いざという時に焦らないためにも覚えておきましょう。
少量または多量の出血
出血量は子宮の開閉状態によって個人差もありますが、生理のような出血や多量の出血は自然流産の兆候のひとつです。出血が1週間以上続くときは子宮内に胎盤や胎児などが残っている可能性が高く、不全流産しているケースが多く見られます。
特に妊娠初期は流産のリスクが高まるため、下着に少し血が付着するくらいの少量の出血でも産婦人科を受診しましょう。
下腹部の張りや腹痛・腰痛
下腹部の張りや腹痛・腰痛などは妊娠中によく見られる症状です。しかし、痛みや張りが強い場合には自然流産の兆候となっている可能性があります。
流産でなくとも妊娠中に起こる症状は妊娠期間によって分類されており、下腹部の張りは子宮が収縮しているときにも起こりうる症状のひとつです。妊娠早期は下腹部が重く感じられ、中期で触ってわかるほどの硬さがあります。そして、妊娠後期には大きいおもりを入れたような強度のある硬さになることが多い傾向にあります。
自然流産の可能性がある兆候や症状は、普段とは違って強い痛みや張りを伴う場合です。いつもと様子が違うときは、医師に相談しましょう。
つわりがなくなる

今まで続いていたつわりが突然なくなるのも、自然流産の兆候として見られる症状です。特に妊娠の早期段階でつわりが終了した場合には、自然流産のひとつである進行流産が疑われます。
女性
20代後半
ずっとつらかったつわりが突然パタッとなくなって…。お腹も痛いしこれはおかしいと思い病院に行ったら、完全流産って言われた。もう何も考えられなくて、旦那にも最初はこわくて言えなかったよ。
つわりは妊娠初期から始まる症状で、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが妊娠を継続させるために分泌することによって起こります。このホルモンは妊娠後期に胎盤が安定してくると自然に分泌量が減ってきます。体調不良でつわりの症状が変化する女性もいますが、正常な妊娠時は妊娠初期に突然つわりがなくなることはまれなのです。
進行流産には開いた子宮口から内容物がすべて出てしまう完全流産があります。完全流産になると胎盤も出てきてしまうので、妊娠が終了となりつわりがなくなると考えられるのです。
自然流産は兆候や症状に気づかない!?
自然流産には出血や痛みなどの症状を伴わず、流産していることに気づかない場合もあります。流産に気づかない症状として考えられるのは、子宮内で既に胎児が亡くなっている稽留流産と、妊娠超初期や妊娠初期に起こる可能性のある化学的な流産です。
どちらの場合もごくわずかな出血量だったり痛みをほとんど伴わなかったりするため、医師によるエコー検査で気づく場合が多いでしょう。また、妊娠超初期には妊娠自体に気づかないこともあるため、流産ではなく生理の経血だと捉えられることもあります。
自然流産した場合の手術など処置の方法は?

自然流産と診断されたからといって、一概に手術が必要だとは限りません。流産をしてしまった妊婦さんの希望で、手術をするかどうかを選択できるのです。
また、自然流産は子宮や胎児の状態によって治療方法が異なりますので、自然流産の種類ごとに分けて処置の方法を紹介します。自然流産と診断されたらそれぞれどのような処置が施されるのでしょうか。
切迫流産の処置の方法は?
切迫流産には治療に効果的な薬がなく、安静や経過観察で様子を見るというのが現状です。軽度な症状の場合には今まで通りの生活をしていても問題ないと言われることもあります。
先輩ママ
40代
妊娠初期に切迫流産と診断されました。でも、出血やお腹の張りが軽度だったのとエコーで異常がなかったので、2.3日はなるべく安静でその後は今まで通りの行動で問題ないと言われました。流産っていう言葉を聞いたときは頭真っ白になったけど、何もなくて良かった…。
切迫流産とは妊娠初期の出血につけられた名称です。妊娠初期の流産は胎児側の問題で発生することが多いため、薬で流産を防ぐことが難しいとされています。流産自体を回避する薬はありませんが、子宮の収縮が見られる場合には子宮収縮を抑制する作用のある薬を投与されることもあります。
経過の観察方法は症状によって違いがあり、重度の場合には入院することもあるでしょう。
進行流産の処置の方法は?

進行流産は不全流産と完全流産で処置の方法が異なります。不全流産の場合には子宮内に残っている内容物を手術で取り出すのか、自然に出てくるのを待つのかを患者さん自身が選択することになるでしょう。自然排出は手術をするよりも体への負担を軽減できるというメリットもあります。しかし、内容物がすべて出てくるまでは出血が続くというデメリットもあります。
また、様子を見ても内容物がすべて出てくるとは限らず、のちに手術が必要になることもあるのです。メリットとデメリットをふまえた上で、ご自身の状況に合う方法を選びましょう。
完全流産は子宮内から内容物が既に出てしまっている状態のため、手術や治療をすることはほぼありません。出血や腹痛などの症状が治まっていれば、経過観察で様子を見ることが多くあります。不全流産・完全流産ともに内容物がすべて排出されたら、排出後の胎嚢(たいのう)に異常がないかどうかを調べます。
稽留流産の処置の方法は?
稽留流産は子宮内の胎児が亡くなっていても子宮口が閉じている状態です。子宮内の胎児や胎盤などを手術により摘出するのか、自然排出を待つのかを患者さんが選択します。子宮内の内容物がすべて排出されて出血や腹部の痛みなどがない場合には、経過観察のみで追加治療の必要はないとされています。
どちらの方法を選択するかについては、進行流産と同様にメリットとデメリットをふまえて医師と相談しましょう。
自然流産後の妊娠や生理はどうなる?

個人差もありますが、流産の処置後の出血はおよそ1~2週間で止まる傾向にあります。出血が治まり子宮の回復も順調であれば、少しずつ元の生活に戻っても問題ないと言われています。生活状況が戻ってくると気になり始めるのが月経の再開とその後の妊活ではないでしょうか。そこで、自然流産後の生理やその後の行動について紹介します。
自然流産後はいつから性行為をしてもいいの?
出血や腹痛などが治まって自身の体力が回復すれば基本的には性行為ができるとされています。具体的には流産後の生理が1~2回きてからです。身体に負担がかからないように、無理な体制やお腹を圧迫してしまうような体位は避けるようにしましょう。
また、切迫流産と診断された場合には医師の指示に従い、出血や腹痛などが治まってからが良いでしょう。精液には子宮を収縮させる成分が入っているため、妊娠中の性行為は避妊することが望ましいとされています。
自然流産後は妊娠できるの?
流産を経験した女性のうち、約80%の女性が流産後の5年以内に出産しています。また、次の妊娠までに要する期間と次回妊娠する確率に関連性はないとされているのです。
1度の自然流産であれば、次の妊娠への影響はないと考えられています。流産の処置で自然排出を選択した場合には、出血や腹痛などが治まり子宮が回復してきたら次の妊娠を考えても問題はないでしょう。手術によって流産の処置をした場合は自身の体力が消耗していますので、3ヶ月ほど経過していれば妊活を再開しても良いとされています。
しかし、流産を何度も繰り返している場合には注意が必要です。2回以上続けての流産は反復流産や習慣流産の可能性がありますので、医療機関の受診をおすすめします。
自然流産後の生理はいつから?
自然流産後の生理は約1~2ヶ月ほどで再開するとされています。妊娠前の生理が不順だったり生理周期が短いなど個人差もありますが、一般的には約1ヶ月を経過したら生理がきたという女性も多くいます。流産の処置後2ヶ月が経過しても生理が再開されない場合は流産の処置をした産婦人科医に相談しましょう。
自然流産にならないための予防法

自然流産は種類によって流産自体に気づかないケースも多く、こうすれば流産の防止になるという確かな予防法はありません。しかし、具体的な対処の手段がなくても流産する危険のある行動を低減させることは可能でしょう。ここからは、自然流産にならないための予防の方法を紹介します。妊娠中の流産への不安を少しでも減らしましょう。
栄養バランスを考えた食習慣を心がける
胎児の健康や成長のために、栄養バランスのとれた食事をとるように心がけましょう。食事に気をつけることは、流産の原因になる可能性がある肥満の予防にも効果的です。健康的な妊婦生活を送るために食事を1日3食とり、流産しやすい妊娠初期に必要なビタミンやたんぱく質などを摂取するようにしましょう。
つわりで食欲不振な場合にはサプリメントを利用したり、緑黄色野菜をスムージーにして飲んだりしても良いですね。
たっぷり睡眠をとる
妊婦さんの睡眠時間は1日7~8時間が適切とされています。また、質の良い睡眠をとるためには23時~7時の間は眠っていることが理想です。とはいえ、妊娠中は眠りが浅くなる女性も多いものです。仕事が忙しくてなかなか睡眠時間を確保するのが難しいこともあるかもしれません。
夜ぐっすり眠れるようにするための対策としては、昼寝をなくしたり昼寝時間を短縮する、抱きまくらを利用してみるなどの方法があります。朝起きたら太陽の光を浴びるのもおすすめです。睡眠は身体を休める大切な時間のため、妊娠中はなるべく睡眠時間を多くとるようにしましょう。
(妊娠中の眠気については以下の記事も参考にしてみてください)
外出時は人混みを避ける
人混みはママの体力を予想以上に消耗したり、ウイルス感染したりしやすい場所です。買い物や用事などでやむを得なく行かなければならないこともあるかもしれませんが、なるべくは控えるようにしましょう。人混みを避けることで感染症の予防にもなります。
飲食店で食事する際は自らが飲酒・喫煙をしないようにするのはもちろんのこと、受動喫煙にも注意しましょう。
自然流産になる前に万全の対策をしよう

ママやパパ、ご家族が悲しい思いをしないよう、自然流産になる前に万全な対策をとりましょう。ママがつらいときはお腹の赤ちゃんにも負担がかかっているということです。妊娠中は無理をせず、体調面に少しでも不安があるときは周りにいるパパやご家族、医師に相談するようにしてくださいね。