妊娠悪阻とは?つわりとは違う?原因や症状、治療法は?実体験あり

【医師監修】妊娠初期のつわりは、めまいや吐き気でつらいですよね。つわりの症状がひどくなると、妊娠悪阻(にんしんおそ)という病気に進行してしまうケースがあることをご存知ですか。入院が必要な場合もある妊娠悪阻の症状から予防対策まで、体験談も交えながらご紹介します。

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専門家監修
カズヤ先生
現在11年目の産婦人科医です。国立大学医学部卒業。現在は関西の総合病院の産婦人科にて勤務しています。本職の都合上、顔出しできませんが、少しでも多くの方に正しい知識を啓蒙していきたいと考えています・・・
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Contents
目次
  1. 妊娠悪阻とは?
  2. つわりと妊娠悪阻の違いは?
  3. つわりと妊娠悪阻の原因は?
  4. 妊娠悪阻のチェックポイント!
  5. 妊娠悪阻の治療方法は?
  6. 妊娠悪阻にならないための「3つの心得」
  7. つらい!妊娠悪阻の体験談
  8. 妊娠悪阻対策は「赤ちゃんを大切に思う気持ち」から

妊娠初期のつわりのメカニズムについては、実はいまだにはっきりと解明されていません。妊婦さんの体内では、さまざまなホルモンが活発化することがわかっており、つわりとの関連を指摘する説もあります。

女性の体は、妊娠するとhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの分泌をはじめます。そして、妊娠初期にはさまざまな女性ホルモンが増えるのです(※1)。これは赤ちゃんを体内で育むために必要なことで「赤ちゃん家づくり」ともいえます。しかし、妊婦さんの体は急激なホルモンバランスの変化に対応することができません。

この期間が、つわりの時期とちょうど同じであるといわれています。めまいや吐き気がするのは、赤ちゃんを育てる環境を整えるため、お母さんの体が頑張っている証しなのかもしれませんね。

(つわりの時期や対策については以下の記事も参考にしてみてください)


妊娠初期のつわりはいつからいつまで?対策や症状の見分け方は?

妊娠悪阻のチェックポイント!

妊娠悪阻は発症してしまうと、日常生活を送ることも難しくなります。入院治療が必要になることもあるので、早めの判断が必要です。とはいっても、症状がつわりの延長線上にあるため、区別がつきにくいですよね。妊娠悪阻の具体的な症状や判断基準についてご紹介します。

妊娠悪阻には治療が必要

妊娠悪阻は治療が必要な病気です。「めまいで動けない」「吐き気がひどい」状態がさらに重篤化すると、母子の命にかかわることさえあります。妊娠悪阻になると、できないことが極端に増えます。「立ち上がれない」「食べられない」「飲めない」などは、妊娠悪阻の代表的な症状です。放置して悪化すると、やがて次のような症状に至ることになります。

●脱水症状
●体重減少
●尿や血液の異常
●肝機能の障害
●意識障害

1つでも当てはまれば病院へ

妊娠悪阻が疑われる場合には、早めの受診を検討しましょう。つわりがひどいと感じたら、次のポイントをチェックして、1つでも当てはまる場合は病院で相談することをおすすめします。

●めまいや頭痛がひどく、起き上がっている間はフラフラしてしまう
●吐き気が常にあり、水を飲むことさえできない
●排尿頻度が異常に低く、トイレにいってもでない
●数日の間に体重が5%以上減った
●吐いたときに、血液や胆汁が混じっている

妊娠悪阻の治療方法は?

実際に妊娠悪阻になってしまった場合、どのような治療をするのでしょうか。症状の程度によっては入院が必要となることも十分に考えられます。

妊娠悪阻の治療には水分、栄養が大切

妊娠悪阻の治療において重要なのは、栄養補給と水分補給です。食べたり飲んだりできない状態の体に、しっかりと栄養と水分を届けてあげることが治療の中心となります。初期段階の妊娠悪阻であれば、通院して点滴治療を受けることが多いです。通院すら難しいほどに悪化した場合は、入院治療となることもあります。

つわりのある妊娠初期は、赤ちゃんにとっても妊婦さんにとっても、十分な栄養が必要な時期です。そんな時期に飲食できない状態になるのは、深刻な問題といっても過言ではないでしょう。そのままの状態が続くと、重篤な脱水症状を引き起こす可能性もあります。点滴によってしっかりと栄養を補給することが重要です。


絶食して点滴で栄養を補うことも

吐き気が強い間は、水を飲んでも吐いてしまうことが多いです。体力的にも消耗は避けられません。何度も吐いてしまうような場合は、絶食して点滴を行うケースもあります。

絶食しての点滴治療は、経口飲食をやめることで吐き気と体力消耗を防ぐ処置です。使用する点滴にはビタミンやブドウ糖が入っていますので、食べなくても最低限の栄養は摂取することができます。1~2週間程度の入院・点滴治療を行うことで、吐き気が改善して日常生活へと戻る人が多いようです。

カズヤ先生

産婦人科医

入院になると、体格にもよりますがおよそ1日あたり1500ml〜2000mlの点滴を行います。 これは、成人が必要なおよその水分量になりますので、仮に全く口から物が食べれなくても補液で補うことが可能です。