母乳性黄疸とは?新生児黄疸との違いは?原因や症状、治療法も!重病の可能性も?

赤ちゃんの肌が黄色っぽくなる黄疸(おうだん)には母乳性黄疸のほかに新生児黄疸があります。この2つの黄疸はどう違うのでしょうか。母乳性黄疸の原因や症状、治療法、重病の可能性など、母乳性黄疸全般について説明します。出産を控えたママやパパは参考にしてください。

Contents
目次
  1. 母乳性黄疸とは?いつまで続く?
  2. 母乳性黄疸の原因と症状は?新生児黄疸とは違う?
  3. 母乳性黄疸の治療法
  4. 赤ちゃんの黄疸は重病の可能性も?
  5. 赤ちゃんの黄疸は要注意な場合も

母乳性黄疸とは?いつまで続く?

赤ちゃんの肌が黄色っぽくなるという、母乳性黄疸は病気なのでしょうか。それとも赤ちゃん特有のものなのでしょうか。そして、いつまで続くのでしょうか。順番に説明します。

母乳性黄疸とは

母乳性黄疸とは、母乳をのむ赤ちゃんの肌が黄色っぽくなる症状です。時には白目も涙も黄色っぽくなったりします。ただ、通常は良性の黄疸で生理現象です。病気ではありません。黄色っぽい肌を心配するママもおられるでしょうが、赤ちゃんの発達に支障はありません。



いつまで続くの?

いつまで母乳性黄疸は続くのでしょうか。黄疸は通常、生後4日から7日にかけて強くなり、生後2、3週間でピークを迎えます。長引くと2、3カ月続くことがあります。

(生後1カ月赤ちゃんについては以下の記事も参考にしてください)

完全母乳育児でも哺乳瓶は必要?用意してよかった瞬間は?練習はさせるべき?

母乳性黄疸の原因と症状は?新生児黄疸とは違う?

肌が黄色くなる原因は赤ちゃんの誕生の仕組みに深く関わっています。仕組みを知れば黄疸への認識も深まります。新生児黄疸との違いもわかってきます。詳しく説明していきます。

母乳性黄疸の原因

母乳性黄疸の原因はビリルビンという分解物質です。母親のお腹(なか)の中にいる胎児はへその緒を通じて赤血球から酸素を取り入れています。胎児が大きくなるにつれ、胎児の全身に酸素がいきわたるようにへその緒を通して赤血球がどんどん送られていきます。

ところが、出産後は赤ちゃんは自発呼吸し、酸素を肺から取り入れます。赤血球が余ってしまいます。余った赤血球は分解されれてビリルビンという分解物質を出します。しかし、赤ちゃんは徐々にしかビリルビンを排出できないので、多くのビリルビンが赤ちゃんの血液内に流れ出てしまうのです。

実はビリルビンには黄色の色素があります。このため血中の黄色のビリルビンが全身を巡ることで肌が黄色っぽく見えてくるのです。ほとんどの赤ちゃんにみられる現象です。

肝機能が未成熟

肝機能が未成熟なのも黄疸の原因です。ビリルビンは肝臓で処理されて便や尿とともに排出されますが、生まれたばかりの赤ちゃんはまだ肝臓が未熟なため余った大量のビリルビンを処理しきれません。ビリルビンが血液内に残り、黄疸化を促すのです。

主な症状

主な症状は赤ちゃんの肌だけでなく、白目も涙も黄色っぽくなったりします。通常は1、2カ月ほどで消えていきます。長引くと3カ月も続くことがあります。ある調査によると、母乳性黄疸は母乳で育つ赤ちゃんの10%から15%にみられるそうです。

黄疸が1カ月を過ぎても続くようになると、良性といわれても心配になります。念のため一度、小児科医に診てもらった方がいいでしょう。病気が疑われる場合もあります。

また、黄疸長期化の原因は母乳そのものにもあります。母乳は大半が脂肪でできており、消化を助けるための酵素を持っています。ところが、この酵素は肝臓の働きをも抑えてしまうのです。未熟な肝臓はさらに働かなくなります。黄色いビリルビンがいつまでも血液内に残って全身を巡り、黄色い肌がいつまでも続くのです。

ビリルビン数値を下げるために

血中のビリルビン数値(濃度)を下げるためには、何ができるでしょうか。答えはシンプル。赤ちゃんが母乳をどんどんのんでくれるといいのです。赤ちゃんが母乳をのめばのむほど体重が増えて、肝臓がより働くようになるからです。ビリルビンがより多く排出されれば、黄疸が改善されていきます。

赤ちゃんが母乳をたくさんのむように、ママは水分を多くとり、バランスの良い食事に努めてください

新生児黄疸との違い

母乳性黄疸と新生児黄疸との違いは、黄疸期間の長短と母乳をのんでいるか否かです。新生児黄疸は生後2、3日ほどから現れ、7日ほどでピークを迎え、10〜14日ほど続いて消えていきます。ほとんどの新生児にみられます。通常、病気ではありません。生理現象です。

便がサインになる

赤ちゃんの便が隠れていた病気を知らせるサインになります。

産まれて間もない赤ちゃんの便の色は菜の花のような黄金色が普通です。しかし、治療が必要な病的黄疸のサインを発しているときがあるのです。出生直後から便がクリーム色や白っぽかったりしたとき、あるいは便が黄色からクリーム色や白っぽい色に変わったりしたときは病的黄疸が疑われます。直ちに小児科医を受診してください。

便の色と病気との関係は母子健康手帳のカラー見本でも確認できます。活用してください。


(赤ちゃんの便については以下の記事も参考にしてください)

新生児のうんちの回数や色は?便が水っぽい時の体調はどうなの?

母乳性黄疸の治療法

母乳性黄疸は良性で病気ではないと説明しました。ただ、黄色っぽい赤ちゃんを見て「何か治療が必要では」「おっぱいをあげてもいいの?」と不安なママもたくさんおられるでしょう。母乳性黄疸には特定の治療法があるのか、説明します。

治療法は特にない

母乳性黄疸は通常、特別な治療法などはありません。黄疸は一定の期間を経て消えていきます。ただ、黄疸の原因であるビリルビンの数値を血液検査で確認し、経過観察をする必要はあります。過度に数値が高いときは病的黄疸が疑われます。

母乳育児はやめないで

母乳育児はやめないでください。

母乳性黄疸の長期化は母乳そのものにもあると説明しました。このため「やっぱり母乳はやめよう」と思うママもおられるでしょう。しかし、赤ちゃんが元気で体重も増えているなら何ら問題はありません。むしろ、母乳をどんどんのんでもらって体が大きくしてどんどんビリルビンを排出してもらう方が望ましいのです。

母乳で「母子の絆(きずな)」をはぐくみたいという思いを大事にしてください。


(気になることの相談については以下の記事も参考にしてみてください)

育児相談は誰にすればいい?メールやサイト、無料の電話窓口サービス

赤ちゃんの黄疸は重病の可能性も?

赤ちゃんの黄疸は通常は生理現象ですが、病的黄疸のときがあります。このため血中のビリルビン数値を調べる検査が欠かせません。数値がかなり高かったり、数値が下がらず高止まりしたりするときは、まれですが胆道閉塞症や肝疾患など重病のおそれがあります。

溶血性黄疸

溶血性黄疸はRh式血液不適合など母親と胎児の血液型の不適合が原因で起こります。強い黄疸や貧血、哺乳力低下などの症状が現れます。長期に続くと脳性麻痺(まひ)が懸念されます。ビリルビン検査や赤ちゃんと母親の血液型検査などで診断します。

閉塞性黄疸

閉塞性黄疸は胆道が閉寒されて起きる強い黄疸で新生児に発症するのが胆道閉塞症です。

胆道は食物を円滑に消化するために欠かせない消化器官の一つ。胆道には肝臓から腸へ胆汁(消化液)を送る胆管があります。その胆管が何らかの原因で閉じていたり、壊れていたりするのが胆道閉塞症です。胆汁が腸に送れず、最悪の場合、命を失うこともあります。

胆道閉塞症の早期発見にまずはビリルビン検査です。また赤ちゃんの便がクリーム色や白っぽいときも胆道閉塞症が疑われます。

肝細胞性黄疸

肝細胞性黄疸は肝細胞のさまざまな障害によって血中ビリルビンが増加し強い黄疸が出ることをいいます。新生児肝炎、肝硬変などの肝疾患を引き起こします。新生児の肝細胞障害の原因には肝炎ウイルスの母子感染や早産、先天性の障害、遺伝などが挙げられています。

胆汁うっ滞性黄疸

胆汁うっ滞性黄疸は肝臓、胆管、膵(すい)臓の障害でビリルビンが排出できなくなって血中にうっ滞(とどまってたまる状態)することで起きる強い黄疸をいいます。肝細胞性黄疸と同様に肝硬変などを引きおこします。長期化すると、ビタミン欠乏症や栄養不足、発育不全を招きます。

核黄疸

核黄疸とは、新生児黄疸の中でも生後まもなくして大量のビリルビンが派生して一部が大脳に沈着して脳神経を傷つけることです。脳性麻痺(まひ)や難聴といった後遺症を引き起こしかねません。幸い光線療法や交換輸血などの治療法が確立されて脳性麻痺は大幅に減りましたが、十分注意しなければなりません。

また、低出生体重児(未熟児)は体重が低いほど核黄疸が懸念されます。呼吸障害など他の障害も併発するとさらに核黄疸の危険性が高まります。

黄疸

黄疸のうち生理現象でない病的黄疸の種類はこれまでに説明してきました。上記以外では血中のビリルビンが異常に増加する高ビリルビン血症があります。高ビリルビン血症は黄疸の危険な合併症である核黄疸の原因となります。

(黄疸の種類や数値の基準値については以下の記事も参考にしてみて下さい)

新生児黄疸って何?黄疸の種類や数値の基準値はどう見ればいいの?

赤ちゃんの黄疸は要注意な場合も

母乳性黄疸、新生児黄疸とも通常は生理現象で病気ではないと説明してきました。しかし、強い黄疸の症状が出た場合は病的黄疸が疑われ、重大な病気が潜んでいるかもしれません。このため赤ちゃんの黄疸症状を見守り、便の色に注意しましょう。少しでも気になる事があれば迷わず医師に相談しましょう。