育児休暇の男性取得率は?取得することでのデメリットがかなり多い?

政府が2024年までに男性の育児休暇率を13%にすると目標を掲げました。これは男性、女性ともに育児がしやすい社会を目指すための一環です。ところが男性の育児休暇取得率は目標に遠く及ばず。その背景には何があるのか、世界の動きと今後の可能性を探ってみましょう。

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Contents
目次
  1. わずか3%ほどの男性しか育児休暇を取得していない
  2. 育児休暇に関する法的制度
  3. 男性が育児休暇を取るメリット
  4. 夫婦で育児休暇を取る場合の収入の違いはどれくらい?
  5. 収入面の格差と強い固定概念が根本原因かも
  6. 子育て支援を進める訳
  7. 世界の男性育児休暇取得率はどれくらい?
  8. 少子化の歯止めと育児政策はフランスに学ぶ
  9. 男性も女性も育児休暇を活用し、育児は育自の発想で

いままで日本における現状をさまざまな角度から見てきました。男性も女性も同じように育児休暇の期間を取得する権利は法的に認められているにもかかわらず、男性の取得率は2017年度現在においても3%そこそこです。いいかえれば、社会的な認識は未だに「子育てや育児などは女性のやるべき仕事」となっている、そして会社などの制度が完璧ではないということかもしれません。

では世界の事情はどうなのでしょうか。いくつかの事例を確認してみましょう。とわいえ、紹介する国々も最初から男性の育児休暇取得率が高かったわけではありません。日本と同じように男性が育児休暇を取得することへのデメリットは意識されていたようです。ですが、国の未来を見越した政府の取り組みがあったのです。

ノルウェー、スウェーデンの場合

出典:http://president.jp/articles/-/5040

世界の国々中でも福祉制度が充実支度にとして知られ、福祉国家と呼ばれるノルウェーですが1993年までを見ると男性の育児休暇取得率は5%程度。日本より少し多い程度です。しかし2003年以降では男性・女性ともに90%以上の育児休暇取得率となっています。それは国が法律で打ち出した「パパ・クオータ制度」によるものです。

「パパ・クオータ制」というのは育児休暇の一定の期間を父親が取得しなくてはならないと定めた制度です。もし父親が育児休暇の一定期間を取得しなければ、育児給付金をもらう権利がなくなってしまいます。現在の男性が取得しなくてはならない一定期間は6週間です。

支給される給付金も休暇期間に入るまでの給与の80%から100%という額。育児休暇期間であっても変わらない収入が補償されたおかげで男性の育児休暇取得率は飛躍的に高くなったと言われています。

スウェーデンでもノルウェーが「パパ・クオータ制」を導入して、男性の育児休暇取得率が向上したことを受けて、1995年から「パパ・ママ・クオータ制」として導入しています。その結果、育児休暇取得率は男性も女性も80%程度に状況しました。育児休暇の期間は夫婦合わせて480日(それぞれ240日)の取得権利を持っています。そのうち60日分はかならず父親も母親も育児期間として取得する必要があります。残りの180日は他方の配偶者に譲ることもできます。

ドイツ「両親手当」導入で男性の育児休暇取得率を10倍に

世界のなかでも労働意欲の高いドイツ。ドイツでは多くのカップルは共稼ぎなので、出産をして片方の親が育児に専念すると、その期間の収入が激減することになります。そのため子どもを持つことを諦めるカップルが増えました。つまりかつてはドイツでも、働いている男女にとって育児はデメリットとなる要素がたくさんあったのです。

これは少子化問題に拍車をかけることになるとして、国は育児休暇期間の給付金制度を充実させました。「両親手当」という制度を法律で定め、片方の親だけが育児休暇を取得する場合は受給期間を12ヶ月とし、両親とも休暇を取得すると期間が14ヶ月に延長されるようにしたのです。この2ヶ月だけを男性が取得するカップルも多いようです。

こうした制度の効果がではじめ2006年には男性の育児休暇取得率は3.3%程度でしたが、数年で10%台に上昇し、2016年の調査では34.2%にまで伸びました。

少子化の歯止めと育児政策はフランスに学ぶ

今まで日本の現状において、女性と男性の就労についての差や、子育てに対する考え方の背景、公務員と民間企業での認識や待遇の違いなどを見てきました。こうした現状を背景に、経済的理由や高学歴化が進む中で女性の晩婚化、子どもを産まないことへの選択などが見えてきました。その結果、少子化、高齢化社会は加速していると考えられます。

こうした現状はもちろん世界中で見られます。ところが少子化、出生率の減少に歯止めをかけた国があります。世界のなかでも福祉や子育てに力をいれている国のひとつ、フランスです。フランスでは少子化解決の打開策としてシラク3原則を打ち出しました。

シラク第一原則:助成金や税制面での措置を設け、子どもを産むか産まないかは女性が決める

子どもを産むのは女性なので産むか産まないかは100%女性に決定権を認めています。また経済支援として助成金の充実や税金面での格差是正などにも取り組んでいます。

シラク第二原則:赤ちゃんの預け入れ施設の完備

女性が産みたいと思ったときはいつでも産める環境の整備がされました。たとえば、待機児童ゼロを実現し、女性がすぐにでも働ける状態を提供しました。

シラク第三原則:育児休暇後の人事評価のランクアップ

女性が出産、育児休業を終えて職場復帰をする場合は、最低でも元のポジションにもとの地位で戻れることを法律で定めました。ここが日本の民間企業との大きな違いです。公務員の待遇と同じにしたわけです。この第三原則は、世界でも注目すべき対策だとされています。

この背景には「子どもを産むことは他にはない勉強をしてきていることになるから、育児休暇を取ったことがマイナスだと考えるのはおかしい。最低でも職場の地位は現状維持であるべきだ」という考え方の存在でした。こうした復帰に関する不安が無くなり、そのことが将来の経済的不安の軽減につながったことで、子どもを産みたいと望む女性が増え、結果、10年をかけて人口減少を食い止めました。

男性も女性も育児休暇を活用し、育児は育自の発想で